動物病院は激務で、給与が安い、かといって、独立開業したとしても、数千万円にのぼる初期投資を回収出来るかどうか不安・・・ということで、第三の選択肢として、民間企業で働くことを考える人は少なくないようなのですが、では、実際のところ、有望な転職先と言えるのでしょうか?
製薬会社からは、獣医師の免許を持つ人材を募集する求人が、頻繁に発生しているのは、間違いありません。
医薬品を開発する過程において、非常に重要な位置を占める安全性試験に携わる人材として、獣医師の価値は高いという意見がある反面、医師免許ほど、強力な武器にならないという人もいます。
これは、どちらが間違っているということではありません。製薬会社の状況は、色々と複雑なので、会社によっても、獣医師の立ち位置・価値が変わってきます。
そのため、より高く獣医師を評価する環境にある製薬会社を見極めて、転職することが重要になってきます。そこで、このページでは、獣医師を巡る製薬業界の転職事情について、重要なポイントをまとめてみます。
製薬業界における、獣医師の採用事情
ポイント1:毒性研究に関する需要で、獣医師が重宝されている
動物を使った安全性試験の業務には、必ず獣医師が必要となります。また、試験が終わった後も、厚生労働省へ申請を出す際に、安全性データが重視されるため、データのとりまとめなどで、主要な役割を担うことになります。
また、市販後も、安全性に関する問題が発生した時には、大きくかかわることになるので、獣医師に対する需要には根強い需要があります。その反面、試験自体はルーチンとなるため、他の研究部門よりも、業務の評価が低く見られる傾向があります。
ポイント2:研究分野において、需要が異なる
現在の傾向として、製薬会社は試験管内試験(培養細胞を使って行う実験)を重視するようになってきています。試験管内試験は生体を使わないため、動物を使用する機会は昔と比べると、減ってきています。
その一方で、がん原性試験など、生体実験は不可欠な分野もあり、こういった分野においては、獣医師の役割は、今も変わらず重要なものとなっています。
また、バイオ医薬品の分野では、実験でサルを使うので、獣医師の必要性が高い、その反面、抗生物質など、開発のペース自体が落ちていて、研究者の需要が減っているなど、薬品の種類によって、事情が異なっています。
そのため、生体試験が必要な分野における、研究開発に力を入れている製薬会社というのが、獣医師にとっては、狙い目の転職先ということになります。
ポイント3:毒性研究を自社内で行っている製薬会社は一部の上場メーカーのみ
最近は、安全性試験を外部の受託施設へ委任して行う製薬会社が増えてきており、今でも、自社内において、安全性試験を実施しているのは、一部の上場医薬品メーカーに限られています。
そういった会社のなかでも、安全性試験自体は、受託会社へ委託して行うようにシフトするところが増えてきています。
そのため、獣医師を募集する求人というのも、実は製薬会社よりも、受託機関のほうが多くなっています。ただし、受託機関の給与は大手の製薬会社と比べると低めですし、開発そのものには関わることはなく、試験をこなすだけで終わりなので、業務としては単調です。
製薬会社であれば、プロジェクトの全体像が見えますし、安全性試験以外にも、色々と関与することがあるので、研究者としての経験値というのは、受託機関で働くよりも、幅広く、かつ深化したものとなります。
そのため、製薬会社から受託機関へ転職することは簡単ですが、その逆は相当に難しいので、受託機関で働くかどうかというのは、慎重に決めたほうがいいです。求人が多いから、そちらに行こうというのは、後々のキャリアを考えると、危険なので注意してください。
ポイント4:実験施設の管理獣医師の需要は少ない
製薬会社で獣医師が行う仕事として、実験施設の動物を管理するというものがありますが、求人需要自体は少なく、かつ、必ずしも、獣医師が行わなければいけないということではないので、獣医師であることの優位性は、殆どないと考えてください。
仮に採用されたとしても、研究開発職と比較すると、かなりの薄給となります。
ポイント4:営業など、研究開発分野以外で、働くチャンスがある
研究開発分野以外で、需要があるとすれば、動物用医薬品のセールスを担当する営業職です。動物病院や獣医師学会に対して、セールスを行うことになりますが、専門知識がある人のほうが、話がかみ合うため、獣医師が営業職に就くというケースは少なくありません。
また、営業用のプレゼン、販促用のパンフレットなどの原稿を作成するメディカルライターでも、獣医師の需要があります。自社製品のPRを目的とした、Web用コンテンツの原稿を作成するといった仕事もあります。
求人数自体は、まだまだ少ないのですが、今後は増えていく可能性があり、給料も良い仕事なので、穴場と言えるかもしれません。(未経験者も年収500~600万円は堅いですし、前職までの職歴次第では、800万前後の年収も見込めます。)
ポイント5:動物用医薬品開発の需要は少ない
動物用医薬品の開発分野においては、獣医師の需要は少ないです。開発に取り組んでいる製薬会社は、日本国内では15社にとどまり、獣医師の求人需要というのは、年間で2~5名程度です。
ただし、求人数が少ない反面、分野としては微生物学にあたりますが、獣医学領域における様々な専門知識が幅広く必要となるなど、転職者に課せられるハードルは高いため、その条件をクリア出来る人だと、ほぼ確実に仕事が見つかります。
特に、畜産現場や製造業に関する理解がある人に対する需要が高くなっているようです。
いかに、自分を高く売るかという発想が重要
獣医師を取り巻く求人需要というのは、色々と複雑ですが、結論としては、獣医師という資格があるから、製薬会社に転職出来るというような、単純なものではないということです。
獣医師を強く必要としている会社もあれば、あまり高く評価していない会社もあります。同じ製薬会社であってもです。それだけに、どの会社が獣医師を求めているのか、冷静に見極めたうえで、転職先を絞りこむことが、転職を成功させるうえでは、必須事項となります。
もし、このあたりの判断に迷うようであれば、製薬会社の内情を把握している、転職会社に相談するのがベストです。自分のプロフィールや転職先に希望する条件を伝えれば、最適な製薬会社を見極めて教えてくれます。
もしかしたら、今現在においては、良い会社が存在しないという結果になるかもしれませんが、そのことが分かるだけでも大きいですし、その場合、今後、希望条件に合う求人が発生した時に、その都度、連絡してもらうようにすることも出来ます。
転職先を探す際には、転職会社はなかなか頼りになるので、うまく活用することを、オススメします。下記のページに、獣医師を募集する製薬会社からの求人案件を扱っている転職会社をリストアップしてありますので、興味がある人は参考にしてください。
獣医師を募集する製薬会社からの求人案件を扱っている転職会社5選
※補足)
薬剤師の資格を活かす形での転職を考えている場合、上記のような総合転職会社よりも、薬剤師の転職支援を専門的に行っている転職会社に相談したほうが、より好条件の求人を紹介してもらえる可能性があります。医薬品製造管理、品質保証、薬事、DI・学術、安全性管理、製造、調達といった職種を中心に、企業内薬剤師の案件を多数保有しています。
製薬会社での勤務経験を必須とする求人だけでなく、未経験者からの応募を可能としている求人も扱っているのが、薬剤師専門の転職会社の特徴なので、企業勤務経験がないという人も、一度相談してみてください。
下記の転職会社であれば、製薬会社からの求人案件の取り扱い数が多いので、相談先として最適です。